広告物とレイアウト
1.訴求効果とレイアウト:
レイアウトは見せる機能の充実のために、まず必要とする視覚要素を決定することから始まる。
1)大きさ、スペースの決定
2)色彩の決定
3)見せ方の決定
4)訴求目的との対応
レイアウトによる効果的な訴求のために要求されることは次のようなことがらである。
1)印象の深さ
2)理解の拡大
3)視認度の拡大
4)訴求の速度
などの個々の視覚の問題処理と共に、全体の統一的感情をつくりだすことに効果をもたせなければならない。レイアウトが目的としているところの機能はこれらのことがらである。
2.フォーマットレイアウト:
使用を決定された視覚要素を位置づけるには、レイアウトによる効果に期待をしなければならないのだが、基本的な構成についての方針が各種の広告物について共通に求められているとすれば、その統一性の枠の中での多様性として、レイアウトによる変化づけを求めなければならない。そこでレイアウトの問題はまずフォーマットづくりから始まるということになる。フォーマットとは、視覚上の統一性をもたせるための形式のことである。フォーマットをつくるためにはロゴタイプの扱い方やマークの扱い方など、それぞれの大きさ、位置のレイアウトを決定することによって統一性のある基本的形式があたえらえる。このときにはすでに訴求に対するコミュニケーションの内容理解が前提となり、求める形式との一体化が行われていなければならない。
この始動の段階での訴求に対する考え方がフォーマットを決定する。レイアウトは以後の各種のメディアにおける実体化のための作業である。
3.景観シュミレーション:
屋外広告物をどのように配置するかという景観にかかわる問題について、そのレイアウトがコンピュータ画面上においてシュミレーションされることによって、掲出結果の判断が用意となり検討上効果を発揮している。
コーポレート・アイデンティティ(略してCI)
1.コーポレート・アイデンティティと訴求効果:
企業イメージの形成にとって具体的な方法として新しい考え方が取り入れられてきた。
それはかつてデザイン・ポリシーなどと呼ばれていたものだが、しだいに今日のコーポレート・アイデンティティという形で統一されるようになった。
コーポレート・アイデンティティとは、企業が各種のコミュニケーションを通じて企業像と実体とが同一のものであるということを明確にすることである。そして他企業とはっきり識別しうる状態にすることを意味している。
企業間の競争は、個々の製品、サービスの品質や価格による競争から、しだいに企業そのものの認知の競争へと変化してきている。コーポレート・アイデンティティによるこの問題の中心課題は、企業におけるデザイン活動と経営との統合という考え方である。
そのために、広告、製品デザインなどといった経営の個別の領域を統合し、企業全体の個性を確立していくことが現代のデザイン活動の大きな課題となっている。
デザインは経営理念を具体化する有力な手段である。企業がいかに優れた経営理念をもっていてもそれがデザインによって生かさなければ、現実には効力を発揮することは困難である。
企業のアイデンティティを実現するための基本要素には社名、社章、商標、専用タイプフェイス、ロゴタイプ、社色、トレードキャラクタ-、スローガン及びマーケッティングステートメントなどが含まれる。
コミュニケーション媒体として事務帳票類、汁器、備品、パッケージ、製品、衣類、標識、サインボード、建物、インテリア、ディスプレイ、エキジビション、輸送機器、広報、広告物、販売促進物などあらゆるものが適用される。
これらの情報は視覚的に直接個人の感覚の世界にとびこみ、企業の個性をストレートに打出する力となることができる。
このようなコーポレート・アイデンティティによる訴求方法にとって今後の問題として要求されるものは、デザインの統一による標準化のみを方法とするのではなく、コミュニケーションの実体化にあたって発想の新しさとか、コンセプトといった内面的なおのの重視、そこから生まれてくる方法のアイデンティティとの調和といった多様性の発見が、企業の社会性の認識の上にも望まれる情報となるであろう。
2.広告物とコーポレート・アイデンティティ
各種のサイン類には必要とする状況と機能的な側面からみて、案内、指示、注意、広告などがあり、それぞれ標識的性格と広告的性格をもつ。これらは一般に個々の必要に応じて制作されることが多いが、アイデンティティの考え方に立って統一ある訴求効果をはかることができる。一般に統一をはかるには次のようなことが考えられる。
1)ロゴタイプとその扱い方の統一
2)色彩による統一
3)マークを中心とした統一
4)形と素材による統一
5)ピクトグラフによる統一
6)フォマットによる統一
これらの統一に関する事項をシステムとすることで
1)恣意的なデザインが避けられ統一した表示が可能となる。
2)以後の広告物の制作が効率的である。
3)発注を統一することでコストの低下をはかれる。
などが期待される。
屋外広告物・サイン類においても、このような合理的な発想であるシステムの導入またはこれへの参加によって、連繋されたイメージづくりの強味を手に入れることができよう。
ところが一方、近年の問題として大企業のコーポレート・アイデンティティによるサイン類の各地への進出について、これらが掲出される地域の特性と結びつかないという批判が地元側から起こってきている。これは次のことに起因していると思われる。
コーポレート・アイデンティティは、その性格上次の2種類のメディアに分かれている。
1)動的なもの(輸送機器、製品、衣類、事務帳票類など)
2)静的なもの(広告物、建物、インテリアなど)
コーポレート・アイデンティティはもともと標識性を主体とし、他企業との差異を明確に指示することがねらいである。特に動的媒体においては、そのねらいは効果的に機能している。一方、静的媒体においては標識性から出発して象徴性をもつことになる。象徴性はイメージとなって企業の代理として表象され機能することによって、人間の意識への連絡をつくる。つまり、意識の中に企業イメージを定着させることになる。そこで、コーポレート・アイデンティティによる屋外広告物は、静的媒体としての特性から、画一化による地域性の拒否を嫌う地元側からの反感という問題をかかえこむ結果となったといえよう。このことは、コーポレート・アイデンティティというトータルな視覚による統一というイメージづくりに対して、統一の中の変化という命題を与えられたわけである。これからは、地域の特性に応えることのできる変化のあるシステムとしての発想が求められることになる。
屋外広告の知識より抜粋監修=建設省都市局公園緑地課編集=屋外広告行政研究会定価(本体4.660円+税)